2005年 12月 22日
3時間ぐらいかな…
長いよね。「ロード・オブ・ザ・リング」もそうだけど、ピーター・ジャクソンは2時間以内の映画作れなくなっちゃた人? …なんて、思ってたけど。 見てしまった今、そんな事言えないッすよ。 何故、33年版100分の映画が今回3時間になったのか、合点がいきましたぜ。 半端じゃねえ!! 3時間観せるだけの価値はあるッす!! 3時間無いと、この映画は出来ない!! やるじゃん、ピーター。 まず、33年版オリジナル「キング・コング」について少々。 WOWOWか何かで観たんだけど、結構面白かったんですよねコレ。 そりゃ、現代人から見れば特撮はストップモーションアニメだから、若干可愛らしさのある感じに見えるけど、人物との合成など、なかなか巧みな特撮が垣間見える。 これを米国は33年に作ってるんだから、そりゃ日本も負けるはずだよ。 オレ的には、キングコングって言うと76年版が多分一番初めに見た記憶があるんだけど。 あ、いや、ホントは「キングコング対ゴジラ」なんだけど、これは一応亜流だし。 つーか、ちょっと前に76年版をお昼のロードショーで見かけて、チラッとだけ観たんだけど……何か…何かキツイんだよね。 まあ、コングが日本式特撮の着ぐるみを使って作っていたところは、ちょっと嬉しかったけど。 ま、さすがハリウッドバジェットで、着ぐるみもよく出来てるし、ミニチュアセットも素晴らしい……のに、コングの芝居が「?!」てな感じで。 サルのクセに、背筋伸ばして歩いてるのね。いやいやいや、それじゃヒトじゃんか! ヒトまんまじゃん! 誰だよ、このスーツアクター。もっとサルのこと勉強しろよって思ってたら、サルの神様リック・ベイカー本人が入ってたんですってね。尚更不思議でならんよ… ま、んなこと言ってるけど、俺にとっての「キングコング」のイメージは幼少の時に観た事のあるコレだったもんで。 ――いや、つまりその後33年版を見たら、コング以外のモンスターがメチャンコ出ていて、コングの印象が薄い事にビックリだったわけで。しかも、恐竜の設定がめちゃくちゃ。ブロントザウルスが人間を食うって… だから、オリジナルはコング映画じゃなくて、アドベンチャー・モンスター映画だったんだぁ…みたいな感じですか。 ま、ここまでの個人的な部分は別に読まなくても良いんですが。 で! 今回の「キング・コング」ですが。 これは、間違い無くモンスター映画であり、アドベンチャー映画であり、そしてコング映画なのですよ!! 素晴らしいです。 ピーター・ジャクソンて頭良いヒトなんだね、凄く。 オリジナル版を愛しているという事は各種インタビューで語られていますが、これはオリジナルのイイ部分を受け継ぎ、足りなかった部分を補完し、さらに自分のやりたかった事を全部やってしまっている…っちゅー、リメイクの手本じゃんか。 時代は33年。 オリジナルと同じ時代。 オリジナルを観てると、余計に楽しめる遊びが凄く嬉しかったです。 フェイ・レイがRKOで映画を撮ってる…て、それ「キングコング」じゃん。 やるなぁ… オリジナル版はね、クリーチャーいっぱい出てくるし、殆どモンスター映画なんすよ。 ま、他のモンスター映画と違う所に、コングの悲劇性とか人間のエゴイズムとか、社会派メッセージが強い、なんてーのは簡単に言える所ですがね。 でもね、オリジナルはそんなにコングに感情移入出来る作りではないんですよ。 だから、コングがエンパイヤ・ステート・ビルから落ちても、そこまで…悲しくは無いって言うか…。 しかしね、今回の「キング・コング」の素晴らしい所ってのは、その弱点を完全にカバーしている所にあるのです。 つまり、人間側のドラマ。 オリジナルはアクション重視の特撮映画だけど、今回はサブ的なキャラクターのドラマ造形が行き届いていて、「ロード~」で群像劇をやってたからこそなのかも。 嬉しいですね、ストーリー的には別に重要ではないんだけど、そういうやや脇の人物にもスポットライトを当ててくれるってのは。 ライトの当てられる、幾らかの人物は死んでしまったりするんですが、そういう時にこの演出が生きてくるんですよねェ。 ただ噛ませ犬(ギロロ?)的なだけで死んで行くのとは、違うしね。やりますねぇ… ま、そういうことしてるから長くなるんだけどさ… ドラマが、とは言いつつ…アクションも半端じゃねえ! まさに字が如く「目まぐるしい展開」。 速過ぎてよくわかんねえ! みたいな。 コングはCGIで作られたコングを、人間がモーションキャプチャーで動かしているわけですが、これって簡単に言えばCGIの着ぐるみを着て演技するって事なんですよね。 アニメーターがPCの中計算しながら動かしたりするのとは違うからこそ、採用しているんでしょうね。 やっぱ、人間が芝居した方がクリーチャーに感情移入しやすいって事なんすかね? 次期ゴジラもそういう形体が取られる事も考えられなくも無い… というか、着ぐるみでのノウハウはたぶん世界中で日本がトップなんじゃないかと思うんですが。となると、そのアナログで培ったノウハウを、こういうデジタルの中で活かせるかもしれなくない? どう動けば、どう撮れば、らしく見えるか、感情移入され易いのか…そのノウハウを何とか活かしてさぁ…どうかねぇ? コングが格好良いんだよなぁ…で、シャイなんだよねぇ。こういう奴いるよなぁ…みたいな。うん……ジャイアンに近いな。敵になると恐ろしいけど、味方になるとこんなに心強い奴はいない。 そういうキャラクター付けもしてるのが移入しやすいっす。 初めは、ただの乱暴者にしか見えなかったコングだけど、だんだんその奥のバックグラウンドが見えてきて。 敵だらけのこの島で、仲間もいない、たった一人で島の王者としているには、辛く、苦しい長い日々があったのだろうなと。そんな中、やっと心許せる存在がアン・ダロウだったわけで… アンと夕陽を見つめるコングの画に無性に悲しくなってしまった。 あそこが一番幸せそうなんだよね。 これから始まる悲劇を知っているから、も~切ないやら悲しいやら… 完全にやられまくりだ、オレ。 またね~ナオミ・ワッツがさぁ。 あんなにキュートな感じの女優さんでしたっけか? 「ザ・リング」の時は別に何とも思わなかったけど。 今回のナオミ・ワッツは素敵です。セクシーさを求めていない演出にも好感が持てます。 実は一番タフなキャラだし。 コングに握られて、あんだけ走ったり、V-REXに襲われたりすれば、「キャ――!」とか言ってる間もなくお陀仏だと思うんだけど…。リカちゃん人形だって人がアレだけ振り回したら、首の一つは抜けるでしょ。 この映画はホントに予算多いんだろうなぁ… 例えば、ジャングルでの役者周りのシーンは、あれセットでしょ? ま、奥の方は合成だろうけど。 にしても、セットがアレだけのクオリティで量も半端ないんだからさ…すげ… 非常にセリフが少ないのもこの映画の特徴ですな。 コングと見詰め合うだけで会話が成立している所が、映画的とも言えます。 余計なセリフが無いんすよね。 かといって、分かりづらい所も無い。見事だよなぁ。エライよ、ホント。 NYでの暴れまくりも見事な出来です。 ですが、素晴らしいのはその後のダンスのシーンですかね。 あれは、まさに05年版キングコングを代弁するシーンていうか。 オリジナルには無い、そして最大の弱点だった所を補完しているシーンすよ。 あそこで、完全にコングとアンが…いや観客が心を通わすわけでねぇ。 そして、悲劇が始まるわけですよ… 悲しいよぉ…やられまくりだよぉ… もう、何だかんだ書いてるけどさ、語るに及ばずって言うかな。 語るなんて、野暮だね。 観りゃ分かるよ、スゲーんだ! みたいな。 いや、ホントに…お世辞抜きで、悔しいかな悪い所が見当たらない…というか。 演出、ストーリー、映像、役者…いいなぁ… せいぜい、気持ち悪いクリーチャーが出てくるって言うぐらいで。 こういう感じでハリウッド版ゴジラ作って欲しかったよ… いや、この「キング・コング」は怪獣映画ではありませんけどね。
by tjtype1
| 2005-12-22 22:31
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